焼きいも

焼きいも

江戸の焼きいも”十三里”

素朴で郷愁を誘う焼きいもはサツマイモの栽培と同時に始まる料理法である。
江戸時代の『甘藷百珍』という本では第一品、「塩蒸し焼きいも」が紹介されている。イモを土のままちょっと水に浸し、塩をぴったり塗りつけて炭火に埋め、蒸し焼きする。さらに、塩釜から掻き出した熱い塩にそのままうずめて焼いたものは風味が最もよいという。
焼きいも屋が江戸に登場し爆発的人気を得たのは寛政年間(一七九○年ごろ)で、幕末には「焼芋売る処、何れの町にても二、三力所あらぬ処はなし」(『喜遊笑覧』)というほどで、夜は〃十三里〃(焼きいもの別名)と書いたあんどんをかかげ”ほっこり、ほっこリ”と呼び売りしたという。江戸の焼きいもの原料が川越の紅赤で新河岸川から舟荷で浅草のイモ問屋に送られた。また、千葉の松戸、柏方面からも運ばれていた。
「つぼ焼き」「石焼き」が登場したのは関東大震災後とみられる。ピーポーと鳴らしながら街中を流す焼きいも売リの全盛期は昭和四十年代で冬の出稼ぎであった。現在はその数も減り、代わってコンビニエンスストアなどで遠赤外線発生器による焼きいもがふえている。

焼きいもの作り方

焼きいもの原風景は落葉たきとともにあるのではなかろうか。幼児にイモ掘りをさせ、たき火をして焼きいもを食べさせる、日本人なら誰しもが体験させておきたいと思うことであろう。
イモは灰の中にそのまま入れてもよいがアルミ箔で包むと食べやすい焼きいもになる。家庭の台所でやるには穴のあいたなべに小石を敷き、上にイモをならべてふたをし、40分加熱するとつぼ焼きいもになる。
石焼き、つぼ焼きは60分もの時間をかけてゆっくり焼き上げるのがコツである。サツマイモのデンプンは、60~80度でゆっくり加熟すると、アミラーゼの働きで麦芽糖に分解される。家電メーカーから売り出されている家庭用焼きいも器は、この石焼きいもの原理を応用して、遠赤外線で二本ぐらいを50分かけてイモの内部からじっくり加熱して焼き上げる方法をと っている。
急ぐ時はイモを蒸してから電子レンジで再加熱して水を飛ばし、こげめをつけると焼きいも風になる。電子レンジで初めから焼くと、すぐ高温になり酵素の働くひまがなく甘味が乏しくな る。電子レンジでつくる場合には、解凍などに使う〃弱〃でじっくり時問をかけて焼くとよい。